低級なアヤカシ達の数は、今も増え続けている。
 だが、彩たちの戦いを少し離れた砂浜から見つめている美樹の周りには、何故か何も近付いては来なかった。


「ねーねー、なんか大変な事になっちゃってるよねー」


 いきなりこんな声が聞こえ、ぎょっとして振り向くと、そこには女子校の制服を着た女の子が立っていた。


「だよなぁ。あんなヤツらが戦うなんて、怖いよな」


 その横で、女の子と同じくらいの男の子がしみじみと呟いた。
 少し斜めにキャップをかぶり、黒いジーンズに所々にラメの入った黒いTシャツを着て、首にはシルバーのネックレスをぶら下げている。


「あなた達・・・?」


 今の美樹にはこの2人がアヤカシだという事はすぐに理解できた。
 だが、不思議と敵意は感じられなくて。


「ねーねー、あたし達ー、とりあえずあなたの事ー、守ってあげるー 」
「・・・はい?」


 この状況にはいささか見合わないような、今時の間延びした喋り方で話し掛けてくる女の子に、美樹は思わず聞き返す。


「まぁな・・・あんな奴らの戦いに加わるのはゴメンだけど、助けて貰ったしな」


 腕組みをして、左足に全体重をかけるようにして立ちながら、男の子は言った。


「あなた達、もしかして」


 女子校にいた、あのアヤカシの仲間なのか。
 そう聞こうとしたら、いきなり2人は美樹に深々と頭を下げる。