『いい方に転ぶか、悪い方に転ぶかは、お前次第じゃ』


 そんなおトキさんの声を聞いて彩が目を開けると、喫茶店『free-time』の屋根の上だった。
 おトキさんの姿は、何処にもない。
 そして、目の前の海岸には、何の気配もない。
 嵐のように、風が吹き荒れているだけだった。
 おトキさんが言っていたように、アヤカシは悠と諒を消し去り、美樹を連れ去った後の時間だ。
 彩はそれでも、すうっと大きく深呼吸をする。