その時、意識を失っている筈の美樹の指が微かに動いた。
 だが、アヤカシは身動きもせずに、迫り来る悠と諒を見据え――。
 次の瞬間、辺りは真昼のような眩い光に包まれる。
 その光が収まった時には、悠と諒の姿は何処にもなかった。


「・・・・・・」


 アヤカシは無表情で、両手に抱えた美樹に視線を送ってから、喫茶店の方向を見つめる。
 青い膜に包まれたその屋根の上で、彩が叫んでいるのが見えた。