『起きろ』


「わっ!」

目がさめると、目の前にドラゴンの顔があった。

「ここは?」

すっかり朝になっていたようだ。
空が水色になっている。


『魔法使いを送り届けた魔法学校だ』


ドラゴンが見た丘の向こうには、
茶色い大きな建物が建っている。

ここは丘の上で、
緑の草が肌の上で揺れている。

地上におりてきたのだ。


「えっ、魔法学校?私の高校じゃなくて…」

てっきり高校にみんなを帰してくれたんだと思っていた。


『まぁ、中に入れ。みんながお前を待ってる』


「はぁ…」


まぁ、みんながいるのなら、
行くしかないけど。



みなみは丘を越えて森の中にある壮大な魔法学校に入る。


見上げるほどの大きな扉を開けると、
そこには何百人という人が集まっていた。


「えっ 、何?」

わぁあぁああぁあ!

同じ制服を着た人々はみなみに向かって拍手をし、歓声を上げている。


なんで?



「みなみちゃん」

学園長が後ろから現れた。


「美奈子おばさん!じゃなくて学園長!」


みなみは学園長に抱きついた。


「無事だったんですね!よかった…
他のみんなは?」


「あっち」

学園長が指さした先には、遼と高尾が立っていた。

「高尾先輩!遼くん!」

みなみは歩いてくる2人に向かって走り出し、抱きついた。


「おお、危ない」

「よかった!2人とも無事で…
本当に、急に消えちゃったからどうしようかと思った!」

「ねぇ、見て。俺達…」

遼がみなみに向かって微笑む。

みなみは遼と高尾が横にいる何百人の人々と同じ服を着ていることに気づいた。


「魔法学校に入った!」


遼が嬉しそうに笑う。

「おめでとう!」

みなみと遼は抱きしめ合う。


「おい、いちゃつくな」



高尾が不服そうに2人を引き離す。


「みなみのおかげだ。俺は、ルクレーシャスに倒されて気を失ってたけど…
みなみがルクレーシャスを倒してくれたから、俺は入学できたんだ。」


「ううん、遼くんもがんばったよ。
体力を使い果たすくらい対抗して魔法を使ったんだから。十分だよ!レベル5の魔法使いよ」




「お前もな」

高尾が横から言う。
高尾も魔法学校の制服を着ている。

「あれ、高尾先輩も入学ですか?」

「あぁ。ルクレーシャスに立ち向かったことで結果的に生徒会のメンバーは全員レベル5にレベルアップすることを認められて、俺は入学資格を得たんだ。
だから俺もずっと憧れだった魔法学校に入ることにした。」

「ちょっと、私たちも居るわよ!」

その後ろから走ってきたのは、
魔法学校の制服を着た
真木先輩と佐野くんだ。

「2人も!」

「僕も…先輩たちと一緒に学びたくて」
佐野が笑った。

「私ももちろん、魔法学校で学びたいから」


真木も誇らしげに言った。


「それはよかったです。なにより
みんな無事で…」

みなみは涙目になった。

「みなみが泣いてどうする、
お前が1番頑張ったんだからな」

遼がみなみの頭を撫でる。

「うん、ありがとう」

「だからいちゃつくなって」

高尾がまた2人を引き離す。

「高尾先輩、俺より先にやられたからみなみを諦めるって言いましたよね!」

「それとこれとは話が別だ!」







「おやおや、元気だねぇ」


誰の声だろう?
みんなが振り向くと、そこにはおじさんが立っていた。

「…誰?」


「あ、そうそう、これは私の夫であり、
この魔法学校の校長です」

美奈子がおじさんと腕を組む。


「えーーっ!?」


「みなみちゃん、大きくなったね。」

「はぁ、どうも。」

って言われてもあなたのことよく覚えてないですごめんなさい!

美奈子おばさんの夫なら、
叔父さんっていうことになるんだけど。
やっぱりあった記憶はすっかり消えている。


「まぁ、覚えてなくても無理はないかぁ。君がまだこんなに小さい頃だったからね」

おじさんは美奈子おばさんのように
優しく笑った。


「それで…みなみはどうする?」

遼がみなみに尋ねる。

「どうするって…」

「魔法学校、入らない?」


私は…魔法学校のことなんて考えたこともなかった。

いきなり入学するかどうかなんて。


「みなみちゃん、魔法学校、あなたにとても良いと思うわ。魔法のレベルをもっと上げられるし、なにより生徒会のみんなと一緒に過ごせるんだもの」


学園長は言った。


「私からも招待させていただきたい。
きみは勇敢で、魔力も人並みはずれたものを持っている。美奈子くらいの強い力を。いや、それ以上かもしれない。
どうかな?ぜひ、我が魔法学校へ」


校長は手で歓声を送ってきた生徒達を
さした。


何百人という目がみなみに向けられる。

「私…」




















「魔法学校に、入学します!」



魔法学校の生徒達は大喜びで、
万歳をしたり歓声をあげたり大暴れしている。


「なんでこんなに喜ばれてるんだろう?」


「みんなお前がどうやってあいつを倒したか知ってるからな。鍵の魔力を引き出してルクレーシャスを負かせた。
その鍵を使いこなしたのは学園長以来初めてのことだったらしい。
それでお前は今、魔法界のトップスターってわけ」


遼が にひひ と笑いながら説明する。

「私だけの力じゃないよ、
みんながいたから頑張れたし、
みんながいなかったら倒せなかった。
学園長からこの鍵をもらってなかったら、倒せなかった」


遼はみなみの言葉に笑顔で頷いた。



「お前はよくやった。
みんなへの愛情もよくわかった。
勇敢な姿もみんな知っている。
俺はお前を魔法学校の生徒として、
喜んで迎える!」


遼はそういうとみなみを抱きしめた。

「み、みんなが見てる」


みなみの顔は真っ赤になった。
心臓がいたい…これは見られてるからなのか、遼くんにドキドキ…しちゃってるのか


「おい」

高尾先輩がまた引き離しにくる。

でも遼はみなみを離さない。

「遼くん…?」


「奪っちゃお」

遼が耳元で囁いた。



遼はみなみを離すと、みなみの顔をじっと見つめた。

「何?」
私の耳は真っ赤だ。

「聞いて?」

みなみを再び抱きしめる。

「お前のこと尊敬してる。
魔法学校の生徒としても、
普通の女の子としても。
真っ直ぐで勇気があって、
俺より粘り強くて、優しい。

俺はお前のこと愛してる。
大好きだ」

おおおおお とてんやわんやしていた魔法学校の生徒達が遼とみなみを見つめている。


「遼くん…見られてるよ!」


「ねぇ、奪っちゃいたい」


高尾先輩が私の横で怖い顔で遼くんの言葉に震えている。


「ねぇ、奪っちゃっていい?」


みなみは甘い言葉に心を溶かされ、
こくんとうなづいた。


「愛してる」


遼はみなみのファーストキスを奪った。


きゃあぁああ!
女子生徒が黄色い声を上げ、なにやら楽しそうに2人を見物している。

私はといえば…この幸せすぎる瞬間を迎えて戸惑ってるとともに…

嬉しかった!









「馬鹿か!」

キスを終えた遼くんを高尾先輩が叩く。

「だってみなみは俺がいい?って聞いたら頷いたんですよ、先輩に関係ないじゃないですか」


「そうじゃなくて!」

みなみは高尾先輩に近づいた。

「みなみ、先輩に構わなくていいぞ」

遼くんが私を止めるが、高尾先輩も私にとって憧れの先輩だ。
ないがしろにはしたくない。



「先輩、私たちを守るために真っ先にルクレーシャスに立ち向かって行ってくれて、ありがとうございました。
勇敢な先輩の姿がとてもかっこよかったです。」


高尾先輩は黙って聞いている。

「私、先輩のことも大好きだけど、
遼くんのことがもっと好きです。
だから、どうか私たちを認めてくれませんか」

高尾は泣き出しそうな情けない表情になり、涙声で言った。


「わかった…でも七瀬!
こいつを泣かせたら速攻で奪い返しに行く!覚えとけ」


「往生際の悪い奴ですね〜」

2人はその後も言い合いをしていたが、
いいライバルだ。これからも仲良くしていくのだろう…多分












「さぁ、では生徒会ssの皆さんを魔法学校の生徒として迎えます。」


みなみは渡された制服に着替えた。

わたしももう立派な魔法学校の生徒に仲間入りだ!


全校生徒がホールに集まり、私と生徒会のみんなはステージに立っている。



安藤先生と美奈子学園長が下から見ている。安藤先生が無事でなにより!


「赤羽みなみ」

「はい!」

「あなたを本校の生徒として迎えるとともに、悪魔ルクレーシャスとの勇敢な戦いを称えます。」


学園長の夫、校長は私に杖を差し出した。私はそれをありがたく受け取る。


そして、私たち生徒会の入学式が終わった。