「あれ…空の向こうに何かある」


ドラゴンが消した黒い雲の隙間から、
城のような建物が浮かんでいるのが見えた。


「あれは何?」

「分からない、もしかしたら、このドラゴンはレベル5の悪魔じゃないのかも」


遼が言うと、ドラゴンはこちらに近づいてきた。


「来るよ、逃げないと!」


みなみはほうきに「後ろへ!」と命令し、後退したが、遼は動かなかった。

「遼君、早く!」


「待て…
このドラゴンは攻撃してこない」


ドラゴンは遼の眼の前で止まり、
瞬きをしていた。

「君は、何?」

遼はドラゴンに問いかけた。
ドラゴンの顔は遼の体より大きく、
何か怪獣のようにも見える。

『あの城は危険だ
近づくな』


どこからか低い声が響いた。

「君が喋ってるの?」

みなみはドラゴンに近づき、ドラゴンの口元に耳をやるが、ゴーッという息遣いしか聞こえない。

『私はこの異空間の主だ。
あの城の悪魔はこの異空間を私から乗っ取ろうとしている。
力づくで城を壊そうとしたが、
あの城には結界が張られていて近づきさえできない。
お前たちは魔法使いの力で通り抜けられるだろうが、近づいたら魔力でころされるぞ。』


ドラゴンは口元は動かさないが、
その瞳ははっきりと2人を捉えていた。
この天の声の主はドラゴンだと分かった。


「でも私達は…レベル5になるから。
それに、この異空間をまもらないと世界が崩壊してしまう」

みなみはドラゴンの瞳に訴えた。

『その通りだ。この異空間が悪魔に乗っ取られれば、現実の世界も彼らのものになってしまい、そのまま人類は彼らに絶滅させられる。だが私でさえ彼らを倒せない。近づくこともできなかった。

お前達は奴らを本当に倒せるか?」


2人より明らかに力のあるドラゴンでさえ、近づきさえできなかったのに、
2人は倒せるのか?

「やってみる。俺たちには生徒会の皆と先生が付いてるんだ。きっと倒せる」

総力戦でいけば、ドラゴン以上の力になる。そのはずだ。


ドラゴンは再び空に向かって火を吐くと
背を向けてどこかへ去った。

『頼んだぞ、魔法使い』


「行くよ。」

遼はほうきを空に向かって飛ばさせた。
みなみもそれに続いて飛んだ。

水平線が見える。
雲の高さまでくると周りが真っ暗になり何も見えない。