「何ですか?」

翌日、生徒会室に呼び出された。

「レベルアップのことだが」

相手は高尾だ。

「…昨日はすみませんでした。
勝手に遼君があんな大口を」

「いや、こっちもお前らの意思に沿って行動するのは構わないんだ。ただ、命の危険があるということを自覚しておいてほしい」


「命の危険ですか?」

みなみはまだ知らない。レベル5とはどのような悪魔と立ち向かうのか。

「レベル4の悪魔…水の塊「ヒト」
でさえも、あの規模で人間界を破壊してくる。それは理解してるな?」


ビルや駅を紙の箱を潰したような状態にしてしまう悪魔。
人間などアリのようなものだった。
悪魔が異空間でしか巨大化出来ないため、現実の街に被害をもたらすことはない。

しかしそれが、レベル5になるとどの規模になるのか。



「レベル5の悪魔はあの程度では済まされない。世界的な問題になる可能性もある…」

世界的な問題。つまり悪魔の大きさが
大陸規模になるということだ。

「実際に世界的に被害が及ぶことは」

「ない。異空間でしか悪魔は巨大化できない。さっき言った通りな。しかし、その異空間に入り込む魔法使い…お前たちはどうだ?」

「実際に被害を受けます」

「そうだ。お前たちは異空間に入り込むんだ。悪魔の攻撃を直に受ければ、命の保障はない。」


「それでも私は」

みなみは諦めなかった。
遼は魔法学校に行きたい。それを後押しするのは自分しかいない。
そして、その後この学園を守るのも、
みなみ1人。

ならばレベル5になるしかない。

なってやろうじゃないか

「それでも私はレベル5になりたいんです。命をかけて、悪魔を倒しに行きます」



高尾は何も言わず立ち上がり、
みなみを抱きしめた。

「高尾先輩…」

高尾の肩は震えていた。

すっ、すっ、と息を吸う音が聞こえる。


「お前が好きだ。お前に何かあったら、
俺は七瀬を憎むしかない。でも…
俺はあいつを信じたい。
あいつのかっこいい先輩でいたい。
そしてライバルでいたい。
だから、お前も七瀬も、無事で帰ってこい。必ずだ」

「先輩」私は高尾先輩の腕を解いた。

「当たり前です、無事に帰って来るのが前提ですから!」

「無事に帰ってきたら、俺のものになってくれる?」

「分かりません…でも、必ず戻ってきます」


私は決意した。
必ず遼君と一緒にレベル5の悪魔を倒し、レベル5の魔法使いになる。
そして、無事に帰って来る!

高尾先輩に敬礼して部屋を出た。