それから遼君は、黙り込んでしまった
が、無事に園舎に着いた。

クリーンな昇降口から、
靴を履き替える。

「みなみに、特別に
『魔法使いの部屋』
を教えてやるよ。」

「…なに?それ…」

“魔法使い”という言葉に

反応してしまうのは、

昨日のことのせい?

「こっち。」

「きゃっ」

身体がひゅっと前に進む。

あたしと遼君の手はつながれていて、

遼君が凄いスピードで長い廊下を

駆け抜ける。

キュッといきなり遼君の足が止まり、

あたしの足も止まる。

目の前にあったのは、


「本棚?」

天井近くまで高さがあり、隙間なく

古い本がならべられていて、

同じような本棚が幾つもあった。


遼君は指で上から5段めに並んでいる

本の背表紙をなぞり、指の止まった本を

手にとった。

その本の表紙には、


『朱鷺和学園 魔法使いの掟』


と書いてあった。


「これだ。」

その本を開き、呪文を唱えた。

「空に浮かぶ無数の星たちよ、

我に力を与えよ。」


ゴゴゴゴゴ…

「 きゃっ、けほけほっ、地震⁈」

砂ぼこりが舞い、

本棚が横にずれ、部屋が現れた。