「お待たせ!」

門のそとで待っていた私は、乱れた
制服を直しながら、はしってくる
遼君を見つめた。

息を切らして、私にちかづいた遼君が
言った。

「ごめん!ちょっと、準備に手間取ってね…」

「そう。それで、話って?」

「うん、中に入ろうか。」

「うん。」

長い園舎まで続く道を、並んで歩く。
細いみちの脇には、色鮮やかな花
が見渡す限り広がっている。

「いい香り。」

ここに住みたくなってきた。

「 この花、学園長が育ててるんだよ。」

「へぇー。まめなんだね、美奈子
おばさん。」

「叔母さん?」

「うん。あたしの叔母だよ。学園長」

「そうだったのか」

「うん。なに?」


「…なんでもない。」

そのとき、遼君が難しい顔をして
何を考えていたのか、
あたしにはわからなかった。