『え?高尾先輩に?』

なんでだろう。

あたしがばっと顔をあげると、
遼君は体を起こし、あたしと
向き合っていた。

「…あいつ、みなみの事好きだろ?」

遼君があの時の目で見つめてきた。
魔法使いの部屋で、魔女になれと
言われた時と、同じ瞳で。


あたしは弱いんだ、その目に。
だから、遼君から目がはなせなくなって、吸い込まれてしまうんだ。


じっとあたしを見たまま、遼君が
言った。

「高尾先輩に取られたくない」

なんで?どうして?


遼君は表情一つ変えない。

『あ…あたしは、誰にも取られるつもり
ない…けど?』

「そっか…」

遼君は悲しそうな、嬉しそうな
複雑な表情をした。

そして、小さな声でこうつぶやいた。