彼女には過去の記憶がない。
中学三年生の冬、目覚めた彼女は病院のベッドの上にいた。

柔らかそうな雪が舞っていて、頭が痛くて痛くて割れそうで割れそうで。

『お母さんだよ?わかる?』
腫れた目で言う、お母さん、という女性。お母さんなのかも分からない。
なんの記憶も無くなってしまった。

目の前が真っ暗になった。