「えっ?元カノ?」
思わぬ言葉に聞き返すと同時に、その意味を理解するには少し時間がかかった。
「そう、元カノ。俺は知ってたんだけど、坂下は知らなかったろ?」
「知りません…」
寿史さんが知っていたという事は、ずいぶん前から接触があったと思って間違いない。
すると、そんな心の疑問に答える様に、寿史さんは言ったのだった。
「だろうな。瞬爾から口止めされてたんだよ」
「口止め?だけど、F企画は広田さんが新規開拓されたんですよね?じゃあ、偶然再会したんじゃないんですか?」
それならば、何も口止めしなくてもいいのに。
隠されると変に勘繰ってしまう。
そう思って我に返った。
私もヒロくんを瞬爾に隠していたのだ。
例え、やましい事実は無いにしろ、隠されていた瞬爾が怒っていても仕方ない。
「広田に営業へ行かせたのは瞬爾だよ。そこに内田さんがいるって知って…」
と言った寿史さんは、思わず眉をしかめた。
「内田さんていうんですか?瞬爾の元カノは」
ここがオフィスでなければ、もっと動揺したかもしれない。
けれど、場所が場所だけに、冷静さを何とか保っていた。
そして寿史さんは、小さく咳ばらいをして続けたのだった。
「そうだよ、内田美咲(うちだ みさき)さん。瞬爾とは、大学の同級生らしい。確か、坂下と付き合う一年前くらいまで付き合ってたんじゃないか?」

