オフィスへ戻ると、瞬爾の“お手柄”報告で盛り上がっている。
遥はどうやら外回りに出た様で、姿は無かった。
「さすがだよな、あいつ」
輪に入れず一歩下がった場所で、その盛り上がりを見つめていると、背後からポツリと寿史さんが声をかけてきた。
「そうですね、さすが瞬爾」
いたって冷静に答えると、寿史さんは言ったのだった。
「俺は、坂下にもあいつみたいな才能があるって思ってる。だけど、いまいち仕事にのめり込めないのは、あいつのせいかなって思ってたんだけど」
「それ、どういう事ですか?」
振り向くと、寿史さんは穏やかな笑みを浮かべている。
「言葉通りの意味だよ。バリバリのキャリアウーマンっていうの?坂下なら、なれそうな気がするんだけどな」
「別に、キャリアウーマンになりたいわけじゃないです。だけど、私が仕事にのめり込めてないって、どういう意味ですか?」
自分でも、仕事人間というほどではないと分かっている。
だけど、それなりに仕事は頑張っていたつもりだ。
「坂下の心は、仕事より瞬爾にあるんだって思ってた。でも、違うのかな?」
その口ぶりでは、瞬爾から何かを聞いているみたいだ。
例えば、私が結婚に迷っているとか…。
「私だって、仕事は大事です。もちろん、全てってわけじゃないですけど。だから、瞬爾と比べる対象じゃありません」
寿史さんは何が言いたいのだろうか。
私にさっさと決断をして、瞬爾と結婚をしろとでも言いたいのだろうか。
そんな邪推すら持った時、寿史さんが言ったのだった。
「今度のF企画とのコラボ、向こうの担当者は瞬爾の元カノなんだよな」

