そのため息は、しっかりとヒロくんにも伝わった様で、電話口から苦笑いとも取れる笑いが聞こえた。
「どうした?婚約者の課長とケンカでもした?」
「えっ!?ヒロくん、知ってるの?」
と聞いてしまい、すぐに納得をした。
瞬爾はヒロくんの会社で、初恋の話を聞いたのだ。
そこで私との関係を話したとしても不思議じゃない。
「知ってるよ。けっこう噂になってるから、莉緒の事が。伊藤課長って人、相当仕事が出来てカッコイイ人なんだろ?」
「う、うん…」
やっぱり、話していたらしい。
噂になっているくらいだから、ヒロくんも当然知っておかしくない。
それにしても、瞬爾は社内だけでなく、ヒロくんの会社でも話をしていたなんて。
どこまでも、私を束縛する気なのだ。
「この間会った時も元気なかったもんな。携帯を気にしてたし、彼氏とケンカしたんだろ?俺で良ければ、いつでも聞くから連絡して。じゃあな」
そう言って切ろうとするヒロくんを、思わず引き止めていた。
「待ってヒロくん!聞かないの?婚約者がいる事、黙ってたのに…」
「俺が問い詰める権利はないだろ?それに、莉緒には話したくない理由があったんだ。いいんだよ、話したくない事は話さなくて」
ヒロくんの声は、小さい頃から知っている優しい声そのままだった。
いつだって私を包み込む優しい声は、聞いているだけで癒される。
「ヒロくん…、私必ず行くから。木下部長の送別会に」
「ああ、待ってるよ」
ごめんなさい部長。
私、ヒロくんに会いたくて行きます。
今はどうしても、ヒロくんに会いたい…。

