「何よ、あれ」
呆れた様に笑う遥の横で、私は笑う事など出来なかった。
やっぱり、瞬爾との結婚で私は仕事を辞めると思われているのだ。
もし、そうでなくとも、営業から外されるのは確実なのだから、戦力として見なされていない。
それを思い知らされてショックだった。
「それにしても、伊藤課長って凄いわね。これで、胸を張って海外へ行けるんじゃない?莉緒、ちゃんと課長に聞いてみてね。ごめんね、余計な話をしちゃって」
弱々しく首を横に振る私に、遥は小さく微笑んだのだった。
その時、私の会社の携帯が鳴った。
「仕事みたいね。じゃあ、莉緒また後で」
軽く手を上げた遥は、足早にオフィスへと戻った。
「もしもし、坂下です」
慌てて電話に出たせいで、着信相手を確認していなかった。
だけど、すぐにそれがヒロくんからだと分かったのだった。
「莉緒、明日が木下部長の送別会って覚えているか?一応、前日確認ってやつで電話したよ」
「あっ…」
「その声じゃ、すっかり忘れてたろ?やっぱり、電話して良かったよ」
ヒロくんのため息が聞こえる。
「ごめ~ん…」
瞬爾の事で頭が一杯で、大事な部長の送別会をすっかり忘れていた。
それより、どうしよう…。
ヒロくんがいると分かっている部長の送別会への出席を、瞬爾がすんなりと許してくれるだろうか。
それを考えると、大きなため息が出たのだった。

