わたしから、プロポーズ



「あれ?莉緒知らないの?課長に、海外事業部への転勤の話がきてるって」

「海外!?」

思わず声を上げ、慌てて両手で口を塞ぐ。

すると、遥が手を引いた。

「こっちで話そう」

お約束の化粧室に行くと、遥は声をひそめた。

「来春、伊藤課長に海外事業部の転勤の打診があるって、芳川課長から聞いたのよ」

「芳川課長から?」

寿史さんが知っているという事は、信憑性がありそうだ。

「だから、二人は結婚するんだと思ったんだけど…。最近、莉緒は何か悩んでるみたいだったし、海外について行く事で仕事を辞めるのが嫌なのかなって、そう思ってさっき聞いたのよ」

「遥…。心配してくれてありがとう」

様子を探る為に聞いてくれていたのか。

だけど、海外赴任なんて寝耳に水だ。

一度だって聞いた事がない。

私が知らなかった事で、遥は余計な話をしたと思ったのか、バツが悪そうな顔をしている。

「遥、気にしないでね。私たち、最近ちょっとすれ違ってて…」

「そうなの?」

安心させるつもりが、ますます心配させていると、遥の表情を見て分かる。

「だから瞬爾は、私に仕事を辞めて欲しいと言ったのね。ようやく分かったわ」

ぎこちない笑顔を遥に向けると、化粧室の扉を開ける。

すると、ちょうど取引先から戻って来た瞬爾と鉢合わせをしたのだった。