「おはようございます」
いつもと同じ出勤風景。
だけど、一課の課長席に瞬爾の姿がない。
オンラインのスケジュール表には、取引先へ直行となっていた。
「やっぱり、本当だったんだ…」
「本当だったって何が?」
独り言に食いついてきたのは遥で、背後からパソコンを覗き込んでいる。
「ビックリした~。遥ってば、突然声をかけてこないでよ」
「だって、何か深刻そうだったから。どうかした?」
「別に」
そうはぐらかし、スケジュール表を閉じる。
すると、遥は私の横にしゃがみ込むと、小声で聞いてきたのだった。
「莉緒は、課長と結婚したら仕事を辞める?」
「え?何よ急に…」
「参考までに。莉緒、けっこう仕事を頑張ってたじゃない?だから、どうなのかなって」
遥とも同期で頑張ってきた仲だ。
私が辞めるかどうかは、気になって当然か。
「瞬爾は辞めて欲しいみたい。ただ、私は、事務方に異動になってまでは、続けたくないの」
「そっか。莉緒って、営業好きだって言ってたもんね」
仕事を辞めなければいけないのが、瞬爾との結婚に抵抗を感じる理由なのか。
こんな風に遥と話している今でも、それは分からない。
「だけど莉緒、嫌でも辞めなきゃいけなくなるかもね」
遥の言葉に、私は小さく首を傾げたのだった。
「どういう意味?」

