「瞬爾…、もう行っていい?結婚の話の事は、もう何も言わないから。みんなに知られて、いけない事じゃないし」
瞬爾が結婚の話をしたのは、ヒロくんの話を聞いたからだろう。
私の結婚への迷いに気付いて、その上初恋の人と再会したのだから、瞬爾が強行手段に出ても不思議じゃない。
それだけ瞬爾は、私を好きでいてくれるという事だ。
「莉緒、何でいつもそうやって、分かった振りをするんだよ。全然、納得出来てないんだろ?」
無理矢理にでも部屋を出ようとする私を、瞬爾は引き止めた。
「瞬爾こそ、何でそんなに話をややこしくしようとするの?いいじゃない。私が、いいって言ってるんだから」
ほとんど投げやりに言った時、瞬爾は腕を引っ張り私を引き寄せると、その唇にキスをした。
「瞬爾…、ここ会社。みんなだって、いるんだから」
だけど、瞬爾は私をきつく抱きしめて、唇を離そうとはしない。
「言ったろ?俺は莉緒を離さない。絶対に。だから、不満があるなら、ちゃんとぶちまけろよ」
瞬爾は何が言いたいのだろう。
私が我慢をすればいいだけの話で、不満をぶちまけたところで、どうなるというのか。
ますます、溝は深まるばかりに決まっている。
もちろん、今回の行動は許せない。
だけど、これ以上言い合いになって、ガッカリしたくないのも本音だ。
瞬爾を好きな気持ちを、失いたくない自分もいるから。

