わたしから、プロポーズ



瞬爾とは、いくら公認の仲とはいえ、社内ではあくまで上司と部下。

人前で話しかける時には、その関係を絶対に保つ為、常に敬語だ。

それが、今は嫌みにも聞こえるのだから皮肉というもの。

「分かるよ。莉緒が怒ってる理由もね」

淡々と答えた瞬爾は、みんなが出たのを確認し、私を会議室へ連れ込んだのだった。

そして鍵を掛けると、私に目を向けた。

会議室の窓からは、オレンジ色に染まった空が見える。

「瞬爾、どうしてプロポーズの事を話したの?」

問い詰める様に聞くと、瞬爾に大きなため息をつかれた。

「やっぱり、その事だよな。何で話しちゃ、いけないんだ?」

「何でって…。だから、まだ何も決まってないのよ?」

「結婚する事は決まってるだろ!」

声を荒げた瞬爾は、すぐに我に返ったのか、少し罰悪そうな顔をした。

そして私は、その怒号の様な口調に、すっかり怯んでしまっている。

「やめてよ。勝手に話すのは。だいたい、誰に話したの?みんな知ってるみたいじゃない」

震える声でそう聞くと、瞬爾は口調を和らげて答えた。

「寿史に話しただけだよ。だけど、近くにいた社員たちにも聞こえてたんだろうな」

まるで悪気もない態度に、付き合って初めて、瞬爾に大きな怒りを感じた。