わたしから、プロポーズ



私は誰にも話していない。

だったら、話したのは瞬爾に決まっている。

だけど、誰に話したというのだろうか。

「え?誰って、みんな噂をしてるから、噂話で聞いたのよ」

「そう…」

チラリと瞬爾のデスクへ目を向けるも、そこに姿はなかった。

「ねえ、瞬爾がどこにいるか知ってる?」

「課長?課長なら、定例会議のはずよ。そろそろ終わるんじゃない?」

「ありがとう」

定例会議といえば、隣の会議室で間違いない。

「莉緒、どうかした?私、安心したのよ。ケンカしたとか言ってたけど、本当はラブラブなんでしょ?」

“安心した”と言う遥の顔は、明らかに心配そうな表情を浮かべている。

その遥に小さな笑顔を向けた私は、オフィスを出て会議室へ向かった。

瞬爾が話したなら、絶対に許せない。

部屋の前で待っていようと思っていたら、タイミング良く瞬爾たちが出て来たのだった。

会議は終わったらしく、分厚い資料を片手に持っている。

すると、先に出てきた寿史さんが、わざとらしい笑顔を浮かべ、無言で私の肩を軽く叩いたのだった。

その行為が、プロポーズを受けた事に対するものだと分かっている。

だけど、寿史さんに笑顔を返す事は出来ない。

その後に出てきた瞬爾は、私と目が合うと表情一つ変える事はなく、私の側へ来た。

「何か用か?」

「私、まだ話しかけてません。でも、課長に用事があると分かるんですね?」

ありったけの嫌みを込めて、私は瞬爾に言葉を突き付けたのだった。