ソファーに座りながら、ヒロくんは優しい眼差しを向ける。
「こっちへは転勤で来たんだよ。といっても、ここが地元なんだけどな。今は別の県に住んでる」
「そうなんだ…。じゃあ、今は一人暮らし?それとも、誰か家族と?」
と聞いて、なぜだか妙に緊張している。
ヒロくんも瞬爾と同じ年齢だ。
結婚していてもおかしくない。
すると、ヒロくんは笑顔を崩さず答えたのだった。
「一人暮らしだよ。まだ、独身だからな。莉緒は?」
「私?私も、まだ結婚してない…」
ホッとする自分がいる。
ヒロくんが、結婚していなくて良かったと思う自分がいた。
「そうなんだ。じゃあ、俺と一緒だな。だけど、莉緒に会えるなんて、本当夢みたいだよ」
「ヒロくん、そう思ってくれるの?」
「思うよ。莉緒の事を、忘れた時なんてなかった。元気かなって、いつも思ってたよ」
この優しさ、まるで変わっていない。
昔の淡い初恋の気持ちが蘇ってくる様だ。
「私も、ヒロくんの事は忘れてなかった。だけど、もう一度会えるなんて、思ってもみなかったよ」
まだ、瞬爾の事は話せない。
第一、再会したばかりで話す必要もない。
そう自分に言い聞かせたのだった。
ヒロくんは、懐かしい初恋の人であると同時に、取引先の担当者だ。
へたに話して、混乱させてもいけない。
そう自分を正当化させていた。

