わたしから、プロポーズ



覚えてくれていた。

それも、何のためらいも見せずに私の事を話してくれたのが嬉しくて、自分でも分かるくらいの笑顔をこぼしている。

「私が、“ヒロくん”て呼んでいた、幼なじみのお兄ちゃんなんです」

まさか、こんな場所で再会出来るなんて、思ってもみなかった。

「そうだったのか。それなら安心した。二人はうまくやれそうだな。これで、何の心配もなく異動が出来るよ」

機嫌良く笑いながら、木下部長が部屋を出て行こうとする。

その姿に、すかさず私は引き止めていた。

「部長!どこに行かれるんですか?」

「二人が知り合いなら、二人きりの方が話し易いだろ?僕は退散するよ」

「そんな…。だって、今まで私を支えてくださったのは、木下部長じゃないですか」

ヒロくんとの再会は嬉しいけれど、木下部長の事だって慕っている。

そんな簡単に席を外されたのでは悲しすぎだ。

だけど、部長は笑顔を浮かべると、部屋を出ながら言ったのだった。

「今度、送別会をしてもらうんだ。坂下さんにも来て欲しい。そこで、最後の別れをしよう」

「木下部長…」

私の返事を待たずして、ドアは閉められた。

そして、この狭い応接室には、私とヒロくんの二人になったのだった。