わたしから、プロポーズ



「お邪魔しまぁす•••」

『ただいま』が言えないのは切ない。
だけど、そんな切なさも吹き飛ばされるくらいに緊張して、心臓の鼓動は速くなる。
瞬爾と二人きりになるのが、これほど緊張するとは思わなかった。

「悪いな莉緒。パソコンはベッドルームにあるんだ」

「そうなの?」

持ち運びに便利だからと、ノート型を無線で繋いでいる。
だけど実際は、いつも固定位置で使っていたのだった。

「莉緒がいなくなってから、夜の時間を持て余してさ。最近は、寝るまでパソコンをいじってるんだよ。こっちへ持って来てもらってもいいから好きにして」

「うん。そうするね」

瞬爾から、夜の時間を持て余しているなんて聞くと妙に意識してしまう。
時間を持て余すなら、私も同じだ。
瞬爾と過ごせない夜は、なんて切ないだろう。
それも、今さらながら痛感している。

「何だが緊張するな」

ベッドルームのドアを開けると、そこは私たちが抱き合っていた時のまま、何も変わっていなかった。

「すぐに変わるものでもないか」

苦笑いをしつつ、パソコンへ向かう。
毎晩、パソコンをいじってるのでは寝不足になるのではないか。
そんな心配も込み上げるけれど、今の私にはそれを瞬爾に伝える事は出来ない。

「今回のプロジェクトは、絶対に成功させなきゃ」

それが今、自分に出来る唯一の事だから。
手を伸ばしパソコンを取ろうとした時、ベッドの下から輝く何かが見えた。

「何だろう」

それに近付き、思わず手が止まる。
ベッドの下から少し見えていたそれは、紛れもなくピアスだったのだ。
それも、私のではない。
輝くピアスは、シンプルなチェーンの先に、ダイヤがついている。

誰の物かなんて、だいたい分かる。
それは、きっと美咲さんの物だろう。
どうしてこんな物が、瞬爾のベッドの下にあるのか。
距離を置く事が私たちに必要だっただなんて、どうして当たり前の様に思っていたのだろう。
それは、私の一方的な勘違いだったのかもしれない。
そう思わざる得なかった。