わたしから、プロポーズ



「新鮮?」

「うん。だって今まで、瞬爾を自分の中のイメージで見ていた気がするから。上司で年上で、私よりもずっと大人で。だけど、瞬爾も一人の男の人だものね。今まで気付かなかった瞬爾に気付けて嬉しい」

そういい終わったと同時に、エレベーターが開いた。
二人きりの空間が終われば、私たちは上司と部下だ。
だけど、少しの間沈黙が続いた私たちには、もう一度、二人きりになれる時間が待っていた。

「乗って」

瞬爾に促されて乗り込んだのは社用車だった。
仕事中だというのに、二人きりになれるというだけで、どこか心が浮ついているのだから情けない。

車が走り出すと、先に口を開いたのは瞬爾だった。

「なあ、莉緒。さっきの話なんだけど、俺も新鮮だったよ。というか、ようやく昔の莉緒に戻ってくれた気がして嬉しかった」

「昔の私に?」

「ああ。昔の莉緒。自然体な莉緒だよ」

その言葉で、私は和香子に会った事を本当に良かったと思った。
和香子の言っていた『壁』を、確実に瞬爾にも感じさせていたらしい。
もしあの時言われなかったら、今の瞬爾の言葉の意味すら、理解できなかったかもしれない。

「それと莉緒。気になったんだけど、お前仕事をセーブしてる?」

「え?ううん、まさか。あ、もしかして、今日暇そうにしてたから、そう思ったんでしょ?」

慌てて誤魔化しながら、瞬爾の鋭さにはドキッとする。
ちゃんと見てくれている、それを感じて胸が熱くなった。

「それなら、いいんだけど」

納得出来ない様子を見せながらも、瞬爾はそれ以上何も聞かなかった。
そして車は、F企画のビルに着いたのだった。