わたしから、プロポーズ



「そうそう。実はね、遥から和香子の家に誘われちゃって…」

片付けも終わり、リビングのソファーで瞬爾とお酒を飲むのも、私の幸せな時間の一つだ。

実は私自身は、お酒にあまり強くない上に、そこまで好きなわけではない。

だけど、瞬爾がお酒好きで強い事もあり、それに合わせているのだった。

「和香子…?」

すっかり忘れている様で、思い出そうと宙に目を向けている。

「私の同期よ。去年、結婚退職した」

「ああ!思い出した。けっこう大人しい子だったよな?」

「うん。その和香子の新居に、遊びに行こうって誘われちゃって」

思わずため息が出ると、瞬爾が小さく笑った。

「どうしたんだよ。嫌なのか?」

「えっ!?ううん。そうじゃないんだけど」

いけない、いけない。

うっかり本音が出るところだった。

和香子自体も仲良くないし、プロポーズを待っている私が、新婚さんになんて会いたくない。

その気持ちを、うっかり出すところだった。

「じゃあ、行ってみればいいんじゃないか?久しぶりに会うんだろ?」

「うん。そうだよね…。実は、手土産に迷っちゃって」

とっさに思いついた嘘で、その場を切り抜ける。

ダメ、ダメ。

瞬爾に軽蔑される様な言動には、気をつけなきゃ。

気を取り直す様に、お酒を口にする。

「莉緒、話は変わるんだけどさ。今週末、何の日か覚えてる?」

グラスを置いた瞬爾が、真顔で私を見つめてきた。