オレは
毎日祈り続けた。

里茉は病気に対しての不安や考えをオレには口にする事はなかったけど

代わりに治療に専念していた。

オレ達に未来があると信じ、奇跡が起きる事を願っていた。

信じていれば願いは叶う。

何だって不可能な事はない。

里茉の強い意志だけが頼りで、オレ達は互いに顔には出さないけど不安な毎日を過ごした。

無力なオレは神様にお願いするしか術がない。

彼女を励ますか、気分転換させるくらい。
あとは一方的に愛を伝えるだけ。

オレは毎日
祈り続けた。




一緒に住み始めて二ヶ月が経つ頃、里茉の体調は悪化する一方だった。

体力も日に日に衰え
眠る時間が増えてきた。

もう仕事も休みがち。

オレ達は朝が来る事を恐れた。

朝、里茉が目覚める度に彼女の記憶を探る。

魂に刻まれた記憶や
オレ達の思い出が崩壊していく事を

一つずつ
泡のように
消えていくのが怖いのに確かめる…

まるで
何もなかったかの
ように

里茉の世界が
廻り続けているのが
怖い


──まだ憶えてる
──まだ思い出せる

だけど確実に
減り続ける記憶

消えずに残ってる記憶を探す事
それだけが
オレ達の糧だった。