…翼…




『はぁ〜〜……』




『なにため息なんかついてんだよ』




『いや、別に〜』



塾がないから金原さんと会えないし…


つまんねーなー……



『そーいや翼塾のバイトの方ねーんだろ?合コン今日やるんだよ!来ねぇ?』



『福田……俺はそんな事よりも大切な事が有るのだよ…』




『えっなに⁈彼女⁈出来たのかよ!言えよばか!!!』





『園芸部だよ!!!』









『は?』










…………













塾で顔を合わせる事がなくて園芸部があるのか聞けなかったけど












来てしまった……









正門の前に立っていると






生徒達がスーツ姿の俺を珍しそうに見て行く







『…あんまりかっこよくないよねー笑』




『背が高いだけじゃん笑』




うっせー………












『先生⁈』









『金原さん…』














驚いてるのか目を丸くする





まぁそりゃ驚くよな笑




『なんで⁈』







『……塾のプリント渡しそびれたからさ…それを渡そうと思って』






『でも…!今日は水曜だから部活もなくて早く帰れたけど、そのこと先生知ってたの⁈』









『そうだったの?知らんかった笑』






『何時間待つつもりだったの⁈』







そりゃぁ








『何時間でも』








『あ……』





『あ?』






『あ……明日!!!
明日ゎ園芸部ある!だからぁ…』








『行くよ』







『うん……お願いします…』







また明日も会えるなんて







『送ってくよ』







『えっ?あ……』







『送ってかせて』








『……はい…』








『つか、今日こんなに早いんだからどっか行かない?』





『え?い…いんですか…?』





『…バレなきゃ大丈夫笑』






『ふりょー笑』





『生徒を楽しませるのも教師としての一環だからさ』





『じゃあ行く!!!どこ連れてってくれるの?』





『どーする?映画でも観ますか?』




『いーじゃ〜ん♡アタシ洋画が良い!!』




『なんでもいーよ笑』



まさかこんなことになるなんて…嬉





『で、塾のプリントってなに?』




げっ忘れてた……


思いつき何だけどなー…





『いや…俺から金原さんへのプレゼントとして宿題のプリントをと思って…』






『ぅげーそんなの要らない〜』




『忘れて来たから大丈夫笑』




『ラッキー笑』









…………






『何みる?』




『先生は?』






『俺は大体の観れるから金原さん決めていいよ』





『う~ん……
じゃあこれっ』





『じゃあチケット買うけど、なんかポップコーンでも買う?』




『いい!お腹空いてないし』




『そう』




『これ以上おごってもらうなんてダメだし』






『いいのに』




『ううん
今度アタシにおごらせてネ』





『いつかね笑』




『ただいまカップルだと半額になりますが』




は?




俺たちってやっぱはたから見たらカレカノ?


うーん…金原さんの反応が怖い……


チラッと横を見ると金原さんも気付いて俺の方をみて

赤くなりながら笑った



『だって。やったネ翼さん♪』



『え?ほ…んとだね…
じゃあ半額にしてくれますか?』



『はい…』



なに?一体どーゆーことだよ?



チケットを買い終わってまだ上演時間になってないので並んでいると



『やったね!ちょーお得笑』



そこ?やっぱそんなんだから付き合ってますってことで
[翼さん]
なんて呼んだのか?



『ふふ、翼さんだって笑
初めて下の名前で言ったよね』




じゃあ

『じゃあこれからもそう呼べば?』




『…え?』
『まもなく上演時間になりますのでお入りできまーす』




結局答えを聞けずに映画を見ることに




映画の内容は時空を越えたラブストーリーとでも言うんだろうか


主人公は男で、その男はなんの決まりもなく今いる時、場所から遠く離れた時代や場所へ行ってしまうものだった

そこでステキな女性と出会い、結婚もする


まぁここまではちゃんと憶えてる



映画も終盤にさしかかったトコロ


そう、その男は狩の最中に出くわしてしまい銃で撃たれてしまう



その時


俺の手に触れたもの


金原さんの手だった


ビックリして金原さんの顔をみると


とても悲しそうな顔をしていた



俺にはたかが映画だけど


金原さんにとっては人生の一部として刻まれているんだ


今にも泣き出しそうな顔


一方、手は堅く握られるばかり



もうそこから映画なんて全然集中出来なかった



でもいつの間にか金原さんの手が俺の手から離れていた




どうすればいい?






今すぐにでも君を抱きしめたい