カノン



会計を終え、ソフトケースに入ったギターを思わず抱き締めた。

私のギターなんだ、これ。

それを背負おうとした時、棗君がギターケースを奪っていった。

「何・・・?」

「何ってなんだよ」

棗君は訝しげに眉根を寄せてギターケースを肩に掛けて店を出た。

涼しい店内にいたからか、さっきよりもやけに熱風が暑く感じられる。またずんずん歩き出す棗君を追いかける。

なんだよって、棗君が荷物を持ってくれてる?

「いいよ、私が持つ」

「みっともねぇからいい」

「何で?私が持ってたら変?」

「うるせぇな。黙って歩けよ」

前に馨君が同じようにギターケースを持ってくれたことを思い出す。

女の子扱いされていることに気付いて、胸が締め付けられるように苦しくなった。


言葉には棘だらけなんだけど、その棘を抜いてみたら優しい言葉ばかり。

時計を見たら店に2時間半も店に居たのに、ずっと付き合ってくれたし、今だって荷物を持ってくれてる。

言われた言葉を鵜呑みにしただけじゃ、怒りっぽくて怖い人っていうのが棗君なんだけど、ちゃんと考えてみるとそれって棗君なりの優しさなんだって思う。

ただ、素直じゃないだけ。

もう少しだけ、もう少しだけでいいの。

棗君と一緒にいたいよ、私。


「な、棗君!」

棗君が足を止めて振り返ると拳に力が入る。

怪訝な顔でこちらを振り向いている棗君。

「暑くない?そこのカフェに寄っていこうよ」

「別に、駅すぐだし」

お、折れそう、だけどもうひと押し。

再び歩き出そうとした棗君を必死にもう一度引き留める。

「今日付き合ってくれたお礼に奢らせてほしいの。小腹も空くころでしょ?」

「まぁ・・・」

「よし、じゃあ行こう」

軽音部の強引さが乗り移ったかのようだ。

右方向に進路を変えて今度は私がずんずん歩く。顔を見られたら今はヤバイ。

絶対、顔真っ赤だもん。

ちらり、と後ろを見ると黙って付いてきている棗君の姿。

可愛いかも。

棗君にはバレないように小さく笑う。


ただ後ろを着いてくる棗を見ただけで心臓を鷲掴みにされたみたいになる。

なんか心臓あたり気持ち悪いし。お腹もちょっと変?

喉にも何かつっかえた感じだし、顔熱いし。

病気にでもなったか、私。