「優柔不断だな、お前」
「棗君は即決できたの?」
棗君は視線を外して口をへの字に曲げた。
おや、珍しい。
「・・・4回くらい通った」
「棗君も優柔不断じゃない!」
「うるせぇよ!とりあえず、パッと見気に入ったやつから弾けよ!」
もう、自分のことは棚に上げて。
やっぱり、棗の睨みはいつ見ても凄みがあって、何回も見ているのに全然慣れない。慌てて視線を外し、ギター選びを開始する。
店員がアンプを持ってきてくれて、キャメルがやっぱり可愛いな、と思ってシールドで繋げる。
試奏って何をすればいいのか良くわからないけど、ジャーンと6弦全部弾いてみた。
「なんか曲弾けよ」
「え、ここで?」
「当たり前だろ」
「お客さんも店員さんもいるじゃん」
「気にすんなよ、あそこでも弾いてるだろ」
顎で示された方に視線を向けると中年男性が速弾きを披露していた。
すごい、自分に酔っちゃってる感じ。
「・・・無理」
「あれは極端だけど、お前と足して2で割った感じにしろ」
「えぇ!?何それ」
「いいから、弾けばいいんだよ」
渋々、スターリンクのデビュー曲を弾き始める。もちろん最初の速弾きは無し。いきなり歌の部分から入る。
あ、そういえばブリッジミュートってここで使うよね。
毎日練習したから歯切れのいい音が出せるようになった。うんうん、こんな感じだ。
最初の何小節かを弾き終えると、違うギターも試したくなった。
「ブリッジミュート、できるようになったんだな」
ギターを選んでいると棗君が呟いた。
「うん。毎日だからね。棗君のアドバイスが効いたんだよ」
次は、白にしよう。真っ白よりこのクリーム色っぽい方がレトロな感じで可愛い。
ボディに2つ、くっ付いたピックアップや弦振動をボディに伝えるブリッジが金色で、ピックガードは黒で引き締まって見える。
「明日からカッティング教えてやるよ」
「どういうの?」
「明日な」
いくつかギターを弾いてみたけど、2番目に弾いたクリーム色のレトロギターが気になって、もう1度弾いてみた。
レスポール自体、暖かい音ってイメージだけど、このギターの音はすーって私の体に浸透してくる気がする。
持った感じもこのギターが1番フィットするし、そして値段は予算内とこれしかないでしょうってくらいのギター。
「これにしようかな、私」
「気に入ったんならそうしろよ」
棗君の後押しもあって、決意した。
私は店員に買います、と言ってそのレスポールを差出すと、店員は柔らかく笑って丁寧に受け取った。

