前をずんずん行く棗君はやっぱり背が高い。
黒のポロシャツにチノパンっていうラフな格好なんだけど、スタイルがいいからそれですらカッコよく見える。
外人がTシャツGパンだけでカッコよく見えるのと同じ感じ。
ラフスタイルなのに、腕時計は高そうな物をつけている。
陽の光が苦手なのか、歩いていると暑っ、とかクソッ、とかぼやいて、完全に弱っている。
楽器屋は駅から徒歩5分くらいのところにあった。
でも、私はほとんど小走りだったから本当は10分くらいのところにあるんだと思う。
1階建てで外観の壁は煉瓦調で思っていたよりおしゃれ。
大きくガラスになっている窓があって、そこにはギターやベースの他にも管楽器や他の弦楽器も陳列されている。
戸崎楽器店、と上部に大きな看板が取り付けられている。
自動ドアが開くなり、棗君は一直線に歩き出し、店内の真ん中で突然立ち止まった。
なんだろう、と駆け寄ってみると涼しい風が直接体を撫でていく。
見上げると、真上に大きなエアコンが付いていた。
「ギターあっち。とりあえず見て来い。俺はもう少し涼む」
頷いて、棗君が指差した方に進むと、一面を覆うギターが広がった。
壁に並んだ吊り下げられたギター、スタンドに立てかけているギター。
種類も様々でエレキギターならストラトキャスターもレスポールも不思議な形をしたギターもあるし、色も赤や青や黒や、これ何色?っていう色まである。
アコースティックギターも含めたらギターだけでどれだけあるんだろう。
どうしていいかわからず、スタンドに立てかけられている手短な黒のレスポールから手にしてみた。
まず感じたのはずっしりくる重さ。
重い、と言われてたけどこれを肩にかけて演奏するのって大変そう。
ネックも太くて、ちゃんとコード弾けるのかなって思う。
棗君は実際に持って弾くしかないって言ってたけど、弾くって言ってもアンプも通してないのにこんなチャカチャカした音だけ聞いてていいのかなぁ。
ピックないから指だし、指だと上手く弾けないな。
値段を見ると、3万円弱。
言っていたように、本当に3万円のギターもあるみたいだ。
でも、何百万もするギターがあるということを考えると、3万円が安く見えてくるから不思議だ。
黒のレスポールは置いて、今度は壁のギターを見上げる。あれはどうやって取るんだろ。
やっぱり、お店の人に言わなきゃダメかなぁ。私、苦手なんだよね、店員さんと話したりするの。
あ、あのキャメル?のレスポール可愛い。
げっ、57万円!?この黒のレスポールと何が違うっていうの?
初心者の私にはわからない何かすごい物がこのギターには隠されているのね・・・。
見た目の違いすらもわからない私には、高いギターなんて宝の持ち腐れだ。そもそも買えないけど。

