カノン




「1番は音だろ。結局高い方がいい音が出る」

「そっか・・・」

でも、何百万に出せないんだよなぁ・・・。

「だからって高いの買っても技術が無いなら宝の持ち腐れ。どれがいい音かなんてわかんねぇだろ」

「わかんない・・・」

「実際に行って、持って、弾いてみるしかねぇよ。それでお前が見た目でも持った感触でも音でも何でもいいからこれいいかも、って思ったやつを買えばいい」

「フィーリング、ってやつですか・・・」

ギター経験の浅い私にギターとのフィーリングを感じることができるのか不安ではある。

どこの楽器屋ならギターがたくさん売ってるのかも知らないし、結局予算はどれくらい持っていけばいいかわからない。


「棗君がレスポールを買ったお店って近い?」

「こっから駅2つ」

「そこ教えてくれる?」

棗君が口頭で道案内してくれが、駅2つと言っても私が普段使わない方の電車の駅。

そこに降り立った瞬間に私は迷子になった。

理解していないことが顔に出てしまっていたのか、棗君は徐々に苛立ち始め、遂には怒鳴る。

「わかってねぇだろ、お前!」

「ご、ごめんなさい」

だって、降りたこともない駅を出てすぐ左に薬局があるからその角を曲がって、とか言われても全然道筋を描けないよ。

聞いている限りだと、大通りには面していない楽器屋さんみたいだし。


「また棗は怒鳴り散らして・・・」

溜息混じりにやってきた馨君は呆れ返っている。

「あ、馨!この前の審査の結果そろそろじゃないの?あたし、気になって夜も眠れないんだけど!」

「嘘つけよ。寝坊して何度練習遅刻してきたんだよ、てめぇ」

「本当はね、昨日届いてたんだけど、咲綺もふたばちゃんもいなかったでしょ?だから今日発表しようと思って。メールとかじゃ味気ないでしょ」

馨君の言い方だと、もしかして・・・。

私は期待を抱きながら馨君の言葉を待った。

咲綺ちゃんも身を乗り出しているし、棗君は早く言え、と早くも苛立ち始めた。

「合格だよ、俺達。ライブ決定!」

「キャー!!やったぁ!!」

咲綺ちゃんは私に飛びついた。反動で背中が折れるかと思ったけど持ち直して私も一緒に飛び跳ねた。

「こういう時も無反応なの?棗は」

馨君は微苦笑を浮かべ、棗に訊ねた。

「審査くらい受かって当然だって思ってたからな」

ツン、としているが嬉しくないはずないと思う。

棗君は誰よりも早く来て毎日練習に打ち込んでいたから、初ライブなんて嬉しいはず。

多分馨君もそれはわかっているようで、私と目が合うと悪戯っぽく笑っていた。