酷い、演奏だった。
礼をし、少しでも早く舞台から消えたくて、背中で拍手を浴びながら早歩きで袖に逃げた。
袖に入るとすぐに耳を塞ぎ、その拍手が聞こえなくなるまでそうしていた。
コンクールがあった昨日は部活を休んだ。
飽きずに続く真夏日に、額や首に汗を滲ませながら外履きを下駄箱にしまって上履きをスノコの上に置く。
「おー、佐伯さんじゃん。この前はどーも。おかげで脳天は無事だったよ」
「それは良かった」
カズ君が私の真後ろにある下駄箱から踵の踏まれた上履きに履き替える。
「風邪?すげー顔色悪い」
私の顔を覗き込んだカズ君は心配そうに「大丈夫?」と訊いた。
「え、そんなに?」
カズ君がこくん、と頷くので掌で自分の顔を触ってみた。
近くに鏡がないから状況がわからない。
「帰れば?」
「ううん、平気。寝不足なだけ」
寝不足っていうのはまぁ、本当だけど、寝れなかった原因は昨日のコンクールにある。
全ての演奏後、結果が張り出される。最初は予選だから張り出された模造紙に名前があれば本選進出。また本選で演奏をして、上位者を発表する。
巻物状にした紙を持った係員が現れると参加者や父兄らがその後を追った。ロビーの壁を転がしながら紙が開かれていく。
必死でその中から自分の名前を探し出す。最後まで紙が開き切った時、私の胸に冷たく鋭い刃物みたいな物が刺さった気がした。
もう一度最初から見直すが私の名前はない。
母の顔を見るのが恐ろしくて、横にいる母の様子を雰囲気で悟ろうとした。
私は予選すら通過しなかった。
帰りの車の中は無言で居心地が悪かった。
きっと、呆れて言葉も発せられないんだろうな。
母に対する申し訳無さと自分の不甲斐無さに嫌気がさした。
「これから部活なの?」
カズ君の言葉で引き戻され、慌てて頷く。
「そうだよ。夏休みはほぼ毎日練習してる」
「すげぇ、やる気だね。なんかあんの?」
「もしかしたら、ライブハウスで演奏ができるかもしれないんだ」
そういえば、結果はどうなったんだろう?予定通りであれば昨日にはわかっているはず。
私は部活に行ってないから知らないだけかもしれないけど、メールとかでも伝えられるはず。
もしかして、ダメで連絡しづらいとか?
「マジ!?すげぇ!」
「いや、まだ決まったわけじゃないんだよ」
思ったよりもカズ君が声を上げるのですかさず言い直した。

