カノン




夏休みに入ったと同時にコンクールまで1週間と迫り、レッスンも毎日になった。

だいたいレッスンは夜だから、軽音部の活動がある時は学校で受験対策の勉強会があるの、と昼間に学校に行ったり、スタジオで練習した。

棗君の気合の入ったスパルタ練習でピアノを弾く頃には疲れ切っているし、指も痛かったりする。

昼間は棗君のスパルタ練習を受け、夜は母のスパルタレッスンを。


なんとかスパルタ尽くしの1週間が終わろうとしている今日はコンクール当日。

普段は化粧をすることがないから母に化粧はしてもらう。

こういう時の化粧って派手で控室みたいな普通の部屋で見ると違和感があって嫌なんだよね。

塗りたくられた厚化粧のせいで、皮膚が窒息しそう。

でも、衣装は気に入っている。

ブルーで、足首まで長さのあるキャミドレス。

胸元にはスパンコールが輝いていて、スポットライトを浴びると輝きが一層に増す。

腰には同じ色の大きなリボンを少し横にずらしてつけている。

シルバーのピンヒールは舞台に上がるまでは履かずに椅子の横。

すぐに靴擦れを起こすし、足を挫くから直前までペタンコのパンプスを履いておく。ピンヒールで街を闊歩するOLを尊敬する。

控室には他の参加者もいるが、高校の部なので全員私とほぼ同じ年。

でも、衣装もメイクも煌びやかだから10代に見えない子もいる。

逆にメイクが浮いている子もいるんだけど、まぁ、それは仕方ない。

多分、私もそっちの部類。

「リラックスして自分の演奏をしなさい。頑張るのよ」

母は私にそう言って控室を出て行った。

そういえば、先週のライブハウスでの演奏も同じことを言われたっけ。

ただ、あの時は咲綺ちゃんのおかげで緊張が解けて、私たちの演奏をしよう、と思ってその通りにできた。

でも、今は誰もがライバル。

それに、高校生しかしないんだから入賞して当たり前、と思っている母のプレッシャーを否が応でも感じるから緊張感は増幅する。

追い打ちをかけるように、昨日あった小学生の部で妹の華はしっかり入賞している。

これで私が賞から漏れれば、母に呆れられるのは目に見えている。


緊張ばかりでなく、様々な邪念が私の中に渦巻いていく。