ライブハウスを出ても尚、気持ちが高揚していることが自分でわかる。
「やりたくなったでしょ」
咲綺ちゃんは私の答えが既にわかっているかのように確信を持った質問をした。
「あたしも早くライブハウスでやってみたい」
「え、やったことないの?」
「言ったでしょー。部活紹介の時。あれが人前で唄う初めての舞台だって」
言われてそういえばそうだった、と舞台袖で咲綺ちゃんが言っていたことを思い出す。
自由に楽しそうに動く咲綺ちゃんを見て、初舞台があの日だったなんて到底思えなかったから上書きされていた。
「すごい慣れてたよね?舞台」
「いろんなライブ見てきたから、その動きを真似してるだけ。家でライブDVD見てテンション上がると家で飛び跳ねたりしちゃうんだー」
照れ笑いを浮かべて、人差し指で頬を掻いた。
「絶対やろうね、あそこで」
「うん。私、もっと上手くなるね」
握り拳に力を込めて決意を表すと、咲綺ちゃんはその拳に自分の拳を合わせてきた。
「それでさ、あたし達が出演バンドの中で一番観客の心を鷲掴みにしてやんの。最高、って思わせてやんの」
「一番?」
さっきのライブ出演者だって私達とほとんど歳の変わらない男女だった。
なのに、音楽だけであんなに観客の心を掴んで、体を突き動かさせてしまう。
そんな演奏が自分にできるのか不安だったし、私より上手い人がゴロゴロいる中で数ヶ月練習しただけで観客を喜ばせることができるのか自信がなかった。
「どうしたの?」
「私、自信がない・・・かも。咲綺ちゃんはきっと、歌で観客を一気に巻き込んで自分の空間にしちゃうんだと思う。けど、私はそんな才能ないよ」
咲綺ちゃんは音楽で他人を突き動かす才能を持ち合わせている。
咲綺ちゃんの後ろで聴いていて何度も実感した。
そう、才能なんだ。
技術が必要なのは当たり前だけど、咲綺ちゃんは立っているだけで存在感が圧倒的だ。
それは、練習すればどうにかできる問題じゃなくて、元から身に着けている才能。
知らないうちに人を惹きつけてしまう咲綺ちゃんなら、きっとあのライブ会場すらも支配してしまうだろう。

