カノン



「ねぇ、ふたば。ライブハウスの下見しない?寄り道パート2」

会計を終え、馨君に手を振りながらファミレスを出ると咲綺ちゃんが提案してきた。

「いろんなライブ見に行ったことあるけど、あそこのライブハウスはまだ行ったことないの。外観しか見れないかもしれないけど。行こ」

私が頷くか頷かないかのうちに、咲綺ちゃんは私の腕を取って歩き出した。

「確かこの辺・・・」

そう言って辺りを見渡す咲綺ちゃんの後ろに前に行ったスタジオがあるビルが見える。

咲綺ちゃんは「ここだ」とスタジオの反対側に位置する地下を指差した。

薄暗くなりつつある空のせいで地下へ続く石段が不気味に見え、私はたじろいだ。


「もしかして、ライブやってるんじゃない?」

咲綺ちゃんは階段の最下段に学校の机に似たテーブルの後ろに座る中年男性を見て、顔を輝かせた。

「当日券あるかなぁ」

咲綺ちゃんが階段を降り始めたので、私は慌てて追いかけた。

「だ、大丈夫?なんか怪しいとこじゃない?」

「ここで合ってるよ。ほら、ドアの横にROSEって書いてる。名前は聞いたことあるから間違いないよ」

それにしても、ライブハウスというのはこんなにも怪しげなのか。

座っている中年だってスキンヘッドだし、シャツの袖から入れ墨が半分見えているし、微かにドアの奥からドンドン鳴っているし。

「ライブハウス来るの初めて?」

「う、うん」

「別に怖いとこじゃないから大丈夫」

ね?と笑顔で咲綺ちゃんが言うので私はぎこちなくだが、頷いた。

「当日券って余ってませんか?」

恐れもせずに咲綺ちゃんは強面のスキンヘッド中年に訊ねた。睨まれているようで、私は咲綺ちゃんの後ろに隠れておく。

「あるよ。ちょうどいい、今始まったばかりだ」

「ほんと!?よかったー」

代金を支払い臙脂色のドアに手をかけた。

近くに来ると更に中の重低音が響いてくる。