「ねぇ!ふたばってば!」

「わあぁっ!?」


片方のイヤホンを抜き取られ、咲綺ちゃんの大声が脳を揺らした。

咲綺ちゃんの声は綺麗だけど、響きすぎるせいで近距離では要注意だ。


「何回も呼んでたんだけどー」

「あ、ごめん」

「なーに?あたしにも聴かせてよ。ふたばがそんなに熱心に聴く曲をさ」

私に体を寄せながら椅子の半分を占領し、私の片耳から取ったイヤホンを自分の耳に近づけた。


「この前言ってたスターリンク」

「うわ、懐かしー。やっぱいいよね、スターリンク。ステラの声が響くよね」

咲綺ちゃんは目を閉じて曲に聴き入っていた。



『太陽みたいなあなたはいつも私を照らしてくれるわ』


『一人でいいと思ってた。それなのに、あなたのせいで一人が怖くなったの』


『ずるいわね、あなたは自由気ままに私から離れては寄り添うんだから』


スターリンクの曲を訳すとこんな感じの歌詞になる。

ボーカルのステラが歌うバラードは澄んだ声と共にどれも心に染み入る。

この曲は大好きだけど、今の私には刺激が強すぎる。


「ふたば!?え、感動しちゃったの!?」

「うん・・・」

この曲は恋にトラウマを持った女の子がまた新しい恋をする歌だけど、今の私には共感できるところが多すぎて私の気持ちをそのまま歌ったかのように聞こえてしまう。


「よしよし。ふたばの心はきっと真っ白なんだろうね」


それを言うなら咲綺ちゃんの方だ。


咲綺ちゃんに頭を撫でられながら、鼻を啜った。