司会の人は簡単にカノンの生い立ちを話すと、「それでは、お願いしまーす」と明るく呼ばれて舞台に上がった。
私達の制服姿を見た招待客は少しざわついたけど、すぐに受け入れてくれて声援などで場の雰囲気を和ませてくれた。
中心に置かれたマイクの前に咲綺ちゃんが立ち、その真後ろに馨君がスタンバイ。
咲綺ちゃんの右手側は棗君で、私とカズ君が左手側でレスポールとストラトキャスターを構える。
機材のセットなどを確認する際に、何の躊躇いも無く自然と決まった立ち位置は高校時代と全く同じだ。
「今日は新郎新婦を祝って、一夜限りのカノンのライブをお届けさせて頂きまーす!」
咲綺ちゃんが挨拶の言葉を述べると拍手が沸き起こり、今や有名歌手となった咲綺ちゃんは自己紹介前でも観客から名前入りで声援を浴びていた。
「それじゃあ、聞いて下さい!」
拍手の中で始まった馨君の力強いドラムの音。
棗君のベースが低く、音楽の基盤を作り、私とカズ君がその基盤上で思い切りギターをかき鳴らす。
激しく鳴り響く音の中を貫き、咲綺ちゃんの美声が会場を支配する。
咲綺ちゃんが飛び跳ね、見ている人を煽って会場を一体化させる。
久しぶりのこの感覚に体が震え、感情が揺さぶられて涙が滲んだ。
あの夏の日に終わった歌が息を吹き返す。
初めて私に声をかけてくれた時と変わらない咲綺ちゃんの明るさで会場の空気が華やかになる。
存在だけで場の空気を引き締めさせる棗君は、鋭い眼光でベースを見下ろしながら時たま顔を上げた時に見せる柔らかい表情にどきりとする。
細腕でも力強い基盤を作る馨君はいつものように私達を包み込むように私達の音色をまとめ上げる。
激しく力強いカズ君のギターはカズ君の性格のように真っ直ぐに会場を貫いて行くようだ。
そして、私がピックを飛ばして真っ白になってしまった間奏部分に入る。
どうしても、慎重になってしまってギターにばかり視線が向いて俯いてしまう。
それでも、間奏を乗り越えて最後のサビで盛り上がりを見せた。
咲綺ちゃんが私に寄り添って、マイクを向ける。
カズ君も近づいて来て、3人で激しく飛び跳ねたり声を合わせたりして、会場は更に盛り上がった。
『あなたと私の未来の地図がどこかで交差していると信じているから・・・』
咲綺ちゃんの歌が終わり、4人の音が激しく鳴りながら馨君以外が跳んで、着地した地点でタイミング良く、音が弾かれるように鳴らされた。
肩で息をしながら余韻に浸っていると、湧き上がった拍手を聞いて涙が溢れた。
あのライブでも観客は笑顔で拍手をしてくれていた。
そして、今も私達を讃えるような声援と拍手。
私達は顔を見合わせ、成功を確信してハイタッチを交わし、観客に勢い良く礼をした。
「ありがとございましたっ!!」
fin...

