久しぶりの弦の感触は硬くて冷たくて、柔らかくなってしまった指に簡単に食い込んで跡を残した。
ぎこちなくコードを確認していると、棗君が苛立ちながらそれを横で眺めていた。
「思ってたよりヤバそうだな」
「はは・・・」
まぁ、自分でも落ち込む程感覚を忘れていて、高校時代に必死で習得した技術も鳴る音が格段に悪くなっている。
「心配すんなって。俺が教えてやるからさ」
カズ君は仕事柄、今でもギターを弾いていて、それどころかベースやドラムも覚えたらしい。
「却下」
「何でだよ。棗、また帰るんだろ?どうやってお前が教えるんだよ」
「なんとかする。だから、お前はいい」
棗君は頑なに拒否し、「やるぞ」と私にギターを弾くよう指示した。
「はっはーん。わかった、棗」
「何だよ」
カズ君はにやけ顔で全てを悟った風に言い、棗君は何を言われるかわかっているかのように鋭く睨み付けた。
「俺が佐伯さんにちょっかい出すと思ってんだろー?」
「違ぇよ、ボケ」
「妬いてる棗、レアだなー」
「違ぇつってんだろ!しつけぇな!」
「俺も流石にダチの嫁には手ぇ出さねぇよ、バーカ」
勢い良く立ち上がった棗君の腕を慌てて掴むと、それよりも先にカズ君がケラケラと笑って言った言葉に棗君はフリーズしていた。
「・・・だっせ」
棗君は口元を抑え、鼻で笑うと、私の方に視線を向けた。
「俺が来れない時は見てもらえよ」
棗君が口元を抑えたのは、きっと緩んだ口を隠す為だったんだろうと思う。
カズ君が自然と言った「ダチ」という言葉が嬉しかったんじゃないかと思う。
人から愛を受けた時に自分の存在意義を実感して嬉しくなってしまう。
長く付き合ってわかった、私と棗君の共通点の一つ。
「最初からそう言えよ。素直じゃねぇなー」
「うるせぇよ」
こうして2人が笑っているのを見ると、やっぱり未来に進んでいるんだな、と実感した。

