「2次会のことなんだけどね」
馨君とカズ君には式の後の2次会の幹事をお願いしていて、そのことについても今日話し合う予定でいた。
「バンドやらないかなって、カズと言ってたんだよ」
「え?私達も・・・?」
「もちろん」
高校最後のあの夏の日が永遠に続けばいいと私は本気で思っていた。
そして、終わった時に、もう絶対にこのメンバーでバンドをやることは無いんだってどこかで思っていた。
最初は純粋に嬉しい気持ちが込み上げてきたけど、あの夏の舞台で棒立ちしてた瞬間も一緒になって蘇ってきた。
皆が私のミスを責めることはなかったけれど、カノンのことを思い出すたびに付きまとう苦い思い出。
忘れることのないその思い出は、今でももやもやと私の中で渦巻く。
「無理無理無理!私、会社入ってから全然弾いてないよ!」
「それ、ふたばちゃんが軽音部入ってすぐの時のリアクションと同んなじ」
馨君は私の慌てようを愉快そうに眺めながら笑っているけど、私はそれを指摘している余裕も無く、首を振る。
「俺だってドラムやってなかったけど、俺達って言ったらやっぱりバンドでしょ?」
「新郎新婦も一緒ってのが面白ぇかなって」
「確かに。いいかもな」
棗君まで乗り気になっていて、このパターンはお決まりだけど、この状況では思い出に浸っている場合でもない。
「そもそも歌は?咲綺ちゃん当日は絶対行くって言ってくれたけど、練習してる時間は無いんじゃないかな」
「何とかなるだろ、そんなん」
「どうしても時間が合わないならテレビ電話とかでやろうかなって思ってたんだけど」
「じゃあ、問題ねぇじゃん」
ここに咲綺ちゃんがいたとしても向こうの勢力が大きくなるだけだろうから、私は早々に勝ち目がないことを悟った。
「また俺が教えてやるよ。スパルタでな」
既に経験者なので、体が震えた。
ブランクがあるせいで棗君の怒声罵声に耐えられるか、不安だ。
「一応、棗君の奥さんになるんだからね?優しく・・・」
「するわけねぇだろ。人に聞かせるならマジでいく」
「そ、うですよね」
私の確認を遮った棗君は当たり前のように宣言した。
何年経っても変わらない棗君のストイックさが嬉しいやら悲しいやら。

