「卒業しても、今のメンバーでバンドやってけんのかなーってちょっと期待してたんだよね」
勉強に飽きてきたカズ君はシャープペンを指で回してぼんやりと呟いた。
「咲綺は卒業したらデビューするし、馨は県外の大学行くとか言うし。結局、バラバラになっちゃったよな」
少し淋しそうに目を伏せるカズ君。
カズ君は私よりもカノンでの思い出が浅いから、きっと物足りなさを感じてるんだ。
私ですら、もっとカノンで活動をしていたかったと思うのに。
「棗はどうするって?」
「え?どうして私に聞くの?」
「付き合ってんじゃねぇの?」
「え!?何でそんなことになってんの!?」
「はぁ!?まだ、言ってねぇの!?」
カズ君は動揺したのか上手に回していたシャープペンが指を滑って机に転がった。
「だって、もう千尋さんと別れたんなら何の気兼ねもねぇじゃん」
「棗君、いろいろ大変そうだし、タイミングも・・・」
カズ君は大きな溜息を吐いて呆れ顔で頬杖をついた。
「勘弁してよ・・・」
「勘弁?」
「俺は棗と付き合ってると思ったから佐伯さんのこと、諦めつきそうって思ったのに、まだフリーじゃ俺にもチャンスあるかなって思っちゃうじゃん」
不貞腐れたような顔をすると、カズ君は机に突っ伏した。
「佐伯さんのバカー」
「ごめん・・・」
「もっと惨めになるから、やめて」
カズ君は顔を上げてちらり、と私に視線を向けるとまた突っ伏して、机の上に出ていた私の手を掴んだ。
「細ぇな」
「カズ君の手が大きいんだよ」
どうしたらいいのか、わからなくてカズ君の明るい髪のてっぺんにあるつむじを眺めていた。

