暑い夏は過ぎ、秋も終わり際。
あの夏の日から早いものでもうすぐ、雪が降る季節を迎える。
麻生さんから後で聞いたけど、レッド・キャッスルとカノンの動員数ではやっぱりレッド・キャッスルに軍杯が上がったらしい。
「これで規模が同じだったらどうなってたかわからないと思うよ」
麻生さんは慰めなのか本音なのか、真意のわからない笑顔でそう言った。
あの時点でレッド・キャッスルはデビューしていたし、観客動員数が勝るのは当たり前のようにも思えた。
「CD出さないのかって問い合わせもあったんだけどさ」
馨君がそんなことを言うと、カズ君がじゃあ、作ろうぜと乗り気になっていたけど馨君が提示したCD創作費用に驚いて、それからは何も言わなくなった。
「泣いてた子とかもいたよねー」
「あ、あの子、路上ライブやった時に来てた子だよ」
「バカッ!お前っ」
「路上ライブ?」
棗君が制したのも遅く、咲綺ちゃんは興味津々にしつこく訊いてきたので、私は棗君に睨まれながら説明をした。
「何それー!密かにそんな面白いことやってたの!?」
咲綺ちゃんはずるいずるい、と子供のように手足をジタバタさせて、不貞腐れていた。
「打倒、レッド・キャッスルとか言ってたけど、負けてもそんなに悔しくないね」
「負けてねぇし!」
カズ君はまだ比嘉さんのことが気になっているみたいだけど、私も実際馨君と同感で、勝ち負け関係無く、達成感でいっぱいだった。
「さよなら、カノン」
清々しい気持ちでそう言えた。
「佐伯さん、マジでやばいっ!教科書が意味不明!」
専門学校だから余裕、と言っていたカズ君。
授業中はほぼ寝ていたし、テストも赤点すれすれだったけど、受験が近づくにつれて筆記試験があることに気付いたらしい。
普通、無いと思わないよね・・・。
「カズ君ってば、これで泣きつくの何回目ー?」
「もう、数えきれないけど、頼みます!」
「仕方ないなぁ」
毎度のことだけど、カズ君の必死の抗議は強烈で、絶対に見捨てられないオーラがある。
教室に居残りをして顔を突き合わせ、ノートに数式を書き出す。
だいたい、最初は首を傾げて「何で?何で?」と自分がわかるまで突き詰めてくるカズ君。
こうなって、こうなってー、こう!
おー、すげぇ!わかるっ!
ってな具合。
そんなわけだから、カズ君のおかげで私の方も根本的な理解が深まっているのでメリットは私にもあるわけだ。

