カノン



「俺達も一週間で演奏できなきゃならないってこと?」

「ぶっつけ本番はしたくないから明々後日あたり、スタジオ借りる?」

「だな。馨、明々後日までにはだいたいマスターしてこいよ」

「鬼だね」

馨君は苦笑いしつつも、厳しいスケジュールに考え込むでも無く、むしろそれを楽しんでいるかのようだった。


「俺、今日棗の家寄るから譜面コピーさせて。明日から俺こっち来ないから。スタジオで個人練習してくる。だいたいと言わず、完璧な状態で叩く」

「え、本気でやるの?みんな」

完全にテンションの違う私は挙動不審に三人の顔をそれぞれ見る。

一週間という短い期限に誰も不安など感じていない。それどころか自信に満ち溢れている。


「そのギター家に持って帰れよ」

「え?」

「家で指の動きとか練習しろ。アンプまで持てとは言わねぇから」

「これ、カズ君のギターなんだよね?」

「やめた奴には必要ねぇだろ」

「ふたばちゃん。いいよ、俺がカズに断っておく」

「でも、持って帰るわけには・・・」

「お前が一番の不安要素なんだから俺らの五倍練習しろ!」

「はいっ!」

棗君の勢いに押し負けて思わず返事してしまったが、ギターケースを担いで家に帰った私を見つけた母親はどう思うのか。

卒倒するかも。

部活で遅くなることだって、図書館で勉強すると言って嘘をついているのに。