カズ君は掃除当番だとかで嫌々ながらも教室に残り私だけは先に軽音部に向かった。
今週は棗君が戻って来ると言っていた週だ。
部室に向かう足が少し足早になってしまう。
ドアを開ける前に少し不安も過ってしまい、その場で躊躇った。
開けたら棗君がソファに座っていますように、そう祈りながら手に力を込めて一気に引いた。
目の前には誰も座っていないソファが相変わらずこの教室に似つかわしく無くそこに静かに佇んでいた。
棗君がいないことに落胆し、大きな溜息を吐く。
「早く入れよ」
既に懐かしさを覚えてしまう低音に勢い良く振り返ると、不機嫌そうにしているいつもの棗君。
「なつめくっ・・・。よかった・・・」
「・・・泣くと思った」
鼻で笑った棗君すらも愛おしいと感じる私は最早異常だ。
棗君は当たり前のようにソファに腰を下ろすとベースを引き出してチューニングを始めた。
私もその横に座ってギターの練習を始める。
「・・・話、できた?」
視線はギターに向けながら、興味が薄い感じに聞こえるよう努めた。
「まぁな」
「誤解は解けた?」
「・・・」
「言いたくなかったら大丈夫。ごめん」
ベースを弄る手が止まったので、私は深追いしたことを自覚して先手を打った。
ギターを肩にかけ、立ち上がると、右手を後ろから掴まれた。
「棗、君・・・?」
「そのままで聞け」
「は、はい・・・」
振り向きかけた首を正面に戻し、直立不動で従った。
未だに右手は棗君に掴まれたままだし、あまりにも突然の棗君の行動に脈拍が上がりっぱなしだ。

