次の休みに参考書を求めて電車を使って大型書店に向かった。
降り立った駅近くの花屋で見覚えのある後ろ姿を発見して声をかける。
「棗君!」
振り向いた棗君は少し眉を寄せて「葉っぱか」と呟いた。
「お花?棗君が?」
店員が包んでいる花を覗き込むと、棗君は私の体を右手で後ろに退けた。
それでも、見えた花の種類は色鮮やかなものでは無く、白や黄色の落ち着いた花ばかりで花束には珍しいと思った。
「似合わねぇって?」
「え、あ、ごめん」
出来上がった花束を受け取った棗君は何も言わずに店を出た。
「何だよ。着いて来んな」
「私もこっち側に用があるんだよ」
棗君は不機嫌そうに歩を進めるけど、私にスピードは合わせてくれているようだ。
「何しに行くんだよ」
「参考書を買いに来たの」
「今更、受験勉強を本格的にやんのか?余裕だな」
「そんなこと無いよ。すごい焦ってるし、大学受験だって明確な理由があるわけでも無いし・・・」
ヤバイ。またネガティブループに突入しちゃう。
思考に急ブレーキをかけて、話を切り返すことにした。
「棗君はこれから何処に行くの?」
棗君が花束を持って歩く姿は珍しくて、どうしてもまじまじと見てしまう。
そんな私の視線に気づいたのか、棗君は私を睨み付ける。
「気になるなら、ついて来いよ」
「どこに?」
「俺の母親の墓」

