カノン




「期限は来週中。ご両親とちゃんと話し合うんだぞー」

始業式後、早々に担任から配られた進路調査票。周りからは「えー」「マジー」「何も決めてねー」と声が上がる。


そんな声に内心ホッとする。

私もそんな嘆きを叫びたいからだ。



「佐伯さんは決めてんの?将来とか」

「うーん・・・。カズ君は?」

「俺?俺は音響専門学校に興味あってさ」

「・・・音響を学ぶの?」

「そう。機械弄りは元々好きだし、そんで音楽にも関わってたかったから、そんな仕事ねぇかなーって思ったら出てきたのが音楽エンジニア」

「ライブハウスで音響チェックしてる人?」

「そ。まぁ、俺はライブハウスで留まるつもりはねぇけど。どうせならライブツアーとかやるようなでかい会場で活躍したいね。で、佐伯さんは?」


カズ君に返されて言葉に詰まる。

とっくに進路を決め、その先の夢まで語ったカズ君に語る夢が私には見当たらない。

ピアノをやめた時、こういうことになるってわかってた。

それでも今やりたい、と思ったバンド。

それを今更後悔することはないけど、わかっていて調べようとしてこなかった自分を恥じる。


「考え中、かな」

曖昧に笑って、かわす。

「そっか。まぁ、当分はバンド活動もやってけるといいな」

そうだ。高校を卒業したら自然と軽音部では無くなるんだ。

そう言えば、卒業後のカノンの活動についてはまだ話したことがなかったな、と思う。


できれば、ずっと皆と一緒に音楽を続けていたい。