後ろから肩を叩かれて振り向くと、カメラを守りながら千尋さんが立っていた。
「やっぱりそうだ。来てたのね」
「千尋さんは取材ですか?」
「そうよ。最後だから張り切っちゃうな」
「最後?」
「あら、話してないの?」
千尋さんは首を傾げて棗君と馨君に視線を送った。
「来月、福岡に異動になったの」
「福岡、ですか?」
福岡まで行くのにどれくらいの時間が必要なのかはわからなかったけど、そう簡単に会える距離では無いな、というのは感じた。
棗君はの方を見ると、大きく溜息を吐いていた。
「レッド・キャッスルのデビュー記事を書けないのは残念だけど、福岡にもいい素材がいるらしいのね。だから今からワクワクしてる」
嬉しそうに話した千尋さんは「じゃあね」と言いつつ、私の耳元に口を近づけた。
「棗とも別れたの。だから、頼んだわね。棗のこと」
「え・・・」
振り向くと、既に千尋さんは手を振って客の中へ入って行ってしまった。
頼むわね、って、もしかして千尋さんは私の気持ちに気づいていたんだろうか。
棗君の方を見ると、ちょうど棗君と視線が合ってしまって思わず視線を逸らす。
私は棗君への気持ちをどうしたらいいのか突然、わからなくなってしまった。

