カノン



弾き終わり、深く息を吐いて棗君の反応を恐る恐る確認する。

「終わり、ですけど」

「懐かしいの弾くじゃん」

「うん。好きなの」

「ド下手だけどな」

「うっ・・・」

やっぱり、聞き苦しく思ってたのかな、と急に不安になった。

ギターを弾いていた時は何を言われたっていい、と思っていたのに。


「余計な音は出すし、逆に出てないのもあるし、コードチェンジ遅すぎだし、手の振りも遅いし弱い」

容赦ない針のように鋭く突き刺さる言葉の数々。

的確すぎて何も言えず小さくなるだけだ。


「明日練習用のTAB譜持ってきてやるから明日からそれ弾けよ。中学の時に少ししかやってねぇ、って言うなら基礎ちゃんとやれば筋は悪くねぇと思う」

「え・・・」

「何」

「褒めてくれたの・・・?」

「は?褒めてねーよ。自惚れんなっ!」

「わ、わかった。ごめん」

乗り出して怒鳴るので、勢いに負けて思わず謝った。

棗君に対してはやっぱり恐怖心があるが、極悪人ではなさそうだ。

確かに、口は悪い。