生憎の大雨と強風だが、レッド・キャッスル出演のライブイベントは通常通り開催される。
ドアを締め切ってしまえば外が大雨であるということも忘れてしまう程、ライブハウスという空間は外観から完全に隔離されている。
レッド・キャッスルが出演するライブハウスはROSEよりも広さがあるから、比例して客の人数も多い。
既に場所取りを終えた客は入り口付近で売っていたCDやパンフレットを見て弾む声で前回のライブを語ってみたり、冷静な評論家のように分析する声も聞こえてくる。
どの出演バンドもそこそこ名の通ったインディーズバンドらしい。それでも、鳳はあの時と同じくレッド・キャッスル。
「こうやって客観視すると、改めてレッド・キャッスルの人気を思い知らされるね」
今日のイベントは企画側が各バンドにオファーを取って出演できるもの。
夏のイベントも募集式だったものの、レッド・キャッスルだけはオファーを受けて出演している。
レッド・キャッスルが既にカノンよりも遠く高い地位にいることを思い知らされる。
それを感じ取ってか、馨君の呟きに誰も反応を示さないから私が小さく「すごいね・・・」とぼやくだけになった。
観客側はすし詰め状態で、少し身動きをしただけで隣の人と肩がぶつかるくらいに近い。
私の隣と前には背が高く、がたいのいい男の人がいて、背伸びをしてもあまり舞台を見られないし、ライブが始まって飛び跳ねられでもしたら吹っ飛ばされそう、という心配が過る。