「俺がどれだけ佐伯さんが好きかわかった?」
「う、うん・・・」
「付き合ってみる気になった?」
「・・・それは、ダメ・・・」
「何で?俺のこと嫌い?」
「嫌いじゃない・・・。でも、私が好きなのは棗君で・・・。だから、カズ君とは・・・」
「待って。それ以上言わないで」
カズ君に制されて首を傾げた。
「今の段階で告白したって俺の負けはわかってた。棗を忘れたいなら付き合おう、って俺のずるい考えにも乗ってこないのは・・・まぁ、少しは予想ついてたし」
「じゃあ、どうして?」
「今、告白したのは佐伯さんに意識してもらう為。だから、答えはまた今度頂戴」
「こ、今度・・・?」
「いつも棗のことばかりだから、俺のことを意識させてやりたかった。これで嫌でも意識するだろ?」
ニヤリ、と不敵に笑うカズ君は隙あり、と頬にキスをした。
「ッ・・・!?!?」
「トドメ。俺のこと、ちゃんと考えてね」
笑顔で何事もなかったように手を振って駅に入るカズ君を、キスされた頬を抑えながら呆然と見送っていた。
カズ君が私のことをそんな風に思っていたなんて微塵も気づかなかった。
いつからそんなことになってたの・・・?
私はすごく無神経なことをしていたんじゃないの?
カズ君がわざわざ先に駅に入って行ったのは帰る方向が一緒だから気まずいだろう、と察してくれたんだと思う。
カズ君の好意に甘え、私は少し時間を潰して駅に入ることにした。
カズ君の思惑通り、私の頭はカズ君のことでいっぱいだ。

