「逸らすなよ。たまには俺のこと、見て」
「え・・・?」
見上げようとした瞬間、カズ君に抱き寄せられ、厚い胸板に顔を埋まる。
「カッ、カズくっ・・・!?」
「俺、佐伯さんが好きだ」
カズ君の胸を通して響くように聞こえてきた言葉をすぐには理解できなかった。
更に強く抱き締められ、カズ君の言葉が繰り返し脳を響かせるので、流石の私も理解してカズ君の胸を両手で強く押した。
「まっ、待って。なん、で、そんな、急に・・・」
「別に、急に思ったわけじゃねぇよ」
「で、でも・・・私が棗君のこと好きだって知ってるし・・・知った時もそんなこと全然気づかなかったし・・・」
「最初は応援するつもりでいたよ。けど、そうもいかなくなった。棗への気持ち、抑えたいなら付き合ってみない?俺と」
冗談で言ってるわけじゃないことはカズ君の目を見ればわかる。
「だ、ダメ・・・」
「どうして?」
「だって、どうして・・・?私なんて、どこが、その・・・す、好きなの?」
「直球でくるなよ。俺だって今、心臓ヤバイんだから」
「ご、ごめん・・・」
何故か謝ってしまったのは私の方も心臓が荒れ狂っていて、頭が混乱しているからだ。
「・・・俺、今すごい楽しいよ」
質問と噛み合わない言葉に一瞬、冷静さを取り戻し、首を傾げた。
「ギター弾くのがすごい楽しい。飽き性の俺が1つのことにこんな夢中になると思わなかった。佐伯さんのおかげだな、って思ってた」
「私は、別に・・・」
「そんなこと言うなよ。最初は感謝の気持ちくらいだったよ、俺も。けど、いつの間にか放課後に佐伯さんに会えるのが楽しみになって、棗ばっかり見てるのにイライラして・・・」
真っ直ぐに私の目を見るカズ君から視線を外せなかった。
それは、私にもわかる気持ちだったから、共感できる。
ただ、それを口に出すことはできない。
私のは棗君に対する気持ちなんだから。
「今日も嬉しかった。偶然会えて。どうしてもあのまま別れたくなくて、カラオケまで付き合わせたし。ピック、同じにしたのだって、佐伯さんが俺の気持ちに気付くかなって思ったからでさ・・・全然気づかなかったけど」
カズ君は苦笑いしたが、すぐに真剣な顔に戻った。

