あの後も何曲か入れてくれたけど、結局、何も唄わずにカラオケ屋を後にして、駅に向かった。
「毎日練習してるって馨にバレてたのか!?」
「うん。ギターは持って来てるからって」
「ちっ・・・目聡いな」
カズ君は苦々しげに舌打ちをしながらも、恥ずかしそうにしていた。
「カズ君と棗君が似てるからわかるんだって」
「どこがッ!!」
「でも、わかるよ。棗君も相当負けず嫌いだし。レッド・キャッスルに静かに闘志燃やしてるし。頑張ってるの見られたくないってとこも」
益々不貞腐れるカズ君を見て、私は口を噤んだ。
自分と考え方が似てるなら分かり合えそうなものなのに。どうして、こんなに歪み合うんだろう。
「ほんと、棗のこと良く見てるよな、佐伯さんって」
「えっ!?や・・・うん、気になっちゃう、よね」
前にもカズ君に指摘されたけど、確かに当たっているから頷くしかない。
カズ君は私の気持ちを知ってるわけだし、隠したって意味がないし。
「棗君には千尋さんがいるし、好きになっちゃいけないってわかってるんだけど、無かったことにはできなくて・・・。つい、目で追っちゃうの。どうやったら好きな気持ちって抑えられるんだろ・・・」
好きになればなる程、辛くなるのはわかっているのに、止められない。
傷つきたくないのに、気持ちの止め方がわからない。
棗君に優しくされれば、やっぱり好きだと感じるし、力になりたいと思う。
無かったことにしたいけど、無かったことにはしたくない。
正反対の気持ちに引っ張られて、千切れてしまいそう。
「教えてやろうか?気持ちを抑える方法」
「あるの・・・?そんな方法」
いつに無く、真剣な眼差しで見下ろされ、つい目を逸らす。

